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August 2005

August 23, 2005

ファンタジーとミステリーの境界

伊坂 幸太郎「オーデュボンの祈り」を読んだ。

村上春樹のファンタジーは、読んでいるうちに自分の立脚地が揺らいでくる。正体不明の不安感、この心地悪さがヤミツキだ。しかし伊坂幸太郎のファンタジー(ミステリー!?)は論理的である。世界観がどことなく村上春樹的ファンタジーなのだが、不思議を不思議のまま投げ出さず──現実的ではないが──論理的な解釈がすべてに付随する。それが伊坂幸太郎のおもしろいところだ。

「オーデュボンの祈り」を数ページ読み進めたとき、真っ先に思い浮かんだのは村上春樹「羊をめぐる冒険」だった。未来を見通すしゃべる案山子、鎖国状態の孤島、無名性と無機質が支配する日常。物語の世界はストレートにファンタジーだ。しかし、すべてに明確な理由がある。しゃべる案山子の物理構造、現在もなお鎖国にいたる歴史的事実、どことなくリアリティに欠ける日常の秘密(ネタバレになるので伏せておきます)。これらが徐々に、時に唐突に解き明かされ、読む者を引き込んでいく。ファンタジーを覆う不思議の数々に、リアルな理由が付随するとミステリーになる──これは大きな発見だった。

内容も濃い。ミステリーにありがちな謎解きに終始するのではなく、悪(黒)と善(白)の葛藤、ねずみ色に入り混じる現実が、物語に深みを与えている。ミステリーというエンターテイメントのフォーマットを借りながら、そのモチーフは実に純文学的だ。

しかし、物足りなさがないわけではない。

ミステリーである以上、物語に破綻は許されない。事実、本作品は見事なまでにすべての謎が解き明かされ、読後の爽快感を演出している。矛盾がない。破綻がない。そのことが最後の最後で物語を浅く終わらせてしまっていた。人の営みとは白黒割り切れないものだ。しかし、本作品は勧善懲悪──もちろん典型的なものではなく、歪みとリアリティを備えているのだが──が支配している。結末を迎え勧善懲悪が浮き彫りになったとき、やはりこの作品はエンターテイメントなのだと実感した。もちろんそれはわるいことではないのだが、物語の途中、真理を串刺しにするような切れ味のいいセリフが連発していただけに惜しまれる。とはいえ、小説の醍醐味は存分に堪能できるはず。福井晴敏「亡国のイージス」以来、久々にガツンときた。

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August 03, 2005

アニメだらけのパチ業界

アイランド秋葉原店に行ってきた。

秋葉原ドンキホーテの1F、B1にあるホールだ。とある情報筋から最近有名なスロプロが入り浸っているらしいと聞きつけ、それならば優良店にちがいないと例によって安直カモネギなオレなのであった。

現地に着き、ありえないものを目撃する。ホールの入り口でフリフリ衣装のコスプレ姉ちゃんが、そこにいるというだけでも衝撃的なのに、変な曲にあわせて踊っていた。ホールに入るには、この横を通りすぎねばならぬ。

なぜ、こんな辱めを……。

メッセサンオーに入店するような恥ずかしさ。別に萌え萌えエロゲーを買いに行くわけではない。ただ打ちに行くだけだ。自分にそう言い聞かせ(言い聞かせないと足が動かない)、Dancingコスプレ姉ちゃんの横をうつむき加減にそそくさと入っていく。ツライ、ツラすぎです。

スロットはB1フロア。設置台数は大規模店舗並みなのだが、狭いスペースに台を詰め込んだような印象。ちょっと落ち着かない。いや、落ち着かない原因は別のところにあった。女性店員がみなメイド服なのだ。そりゃまあアキバだし、さもありなん、ということなのだが、猫耳でないのがせめてもの救いか。

このホール、どういうわけか銭形がやけに多い。いまどき30台設置は異例のこと。しかも、リオデカーニバルも29台と大盤振る舞い。さらに十字架スーパーブラックジャック777という旧機種を新規導入するという。ともに萌え萌えアニメキャラをモチーフにした台。秋葉原という場所柄を憎たらしいほど意識した経営だ。1Fのパチンコホールを徘徊すると、エヴァンゲリオンがやたらと多い。全70台。パチンコホールの半数近くがエヴァ。通常のホールは海物語系が一番多いのだが、このホールの大海物語はわずか14台のみ。総じていえることは、アニメキャラの機種が圧倒的に多いのだ。秋葉原にもずいぶんとホールが増えたけど、ここまで確信犯的なホールはめずらしい。ていうか、平常心で打てないんですけど……。

結局この日、まったくコインを流せずに投了。場の空気に完全に飲まれてしまった。ただ、客層を観察すると、大半の客はあまり粘らない。ちょろっと出してすぐにコインを流してしまう。店側が高設定を投入さえすれば、ハイエナできる可能性大。ただ、例によって時間帯でかっちり枚数規制している様子なので、終日打つのは厳しそうだ。本当に優良ホールなのか。スロプロが入り浸っているという情報は正しかったのか。それは、かなり疑問。ただ、怖いモノみたさで遊びに行くにはちょうどいいホールだ。

アイランド秋葉原店、異例なホールだが、ある意味パチンコ業界を象徴しているかもしれない。昨今の機種はアニメとのタイアップばかり。北斗はいうに及ばず、エヴァ、銭形、サイボーグ009、巨人の星、ウルトラセブンに仮面ライダー。リオや十字架はオリジナルキャラだが、すさまじく萌え萌えだ。アニメオタクは自分の趣味のために湯水のごとく金を使う。いまやパチンコ業界のメインターゲットは、オタク。無垢で内向的な少年たちの、懐をごっそりかすめようという策略だ。該当者は、気をつけろ!

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