消費者はラットか?
掲載前なので詳しいことは書けないが、
某誌のお仕事で4大パソコンメーカーを取材した。
取材内容はメーカーによってまちまちだ。
一機能のついての取材もあれば、
特定機種に関しての取材もある。
ただ、まったく別々の話にも関わらず、
行き着くところはひとつだった。
物作りの姿勢。それが浮き彫りになった。
4社中、3つのメーカーは、
常に完成度というものを意識していた。
実用に耐えうるというレベルでは満足しない。
その一歩上を見据え、ユーザーの期待を
裏切らないレベルに達してはじめて、
新機能を実装したり、新製品を投入している。
ただ1社だけ、そうではないメーカーがあった。
そのメーカーはとある新機能をパソコンに搭載した。
機能自体、取り立てて斬新なものではない。
同機能を提供する周辺機器はすでに存在するし、
おそらく他メーカーだって実装するだけなら可能なはずだ。
ただ、質の向上が難しい機能だけに二の足を踏んでしまう。
そんな機能に、某メーカーはあえて挑戦した。
チャレンジしたことは評価したい。
しかし、エンドユーザーの視線でその機能を見たとき、
満足からほど遠い出来だった。少なくとも僕はそう感じた。
その印象は心に秘め、取材にのぞむ。
開発行程、開発秘話を中心に話は進む。
彼らなりの苦労と満足感が言葉の端々ににじむ。
さらに話が進む。今後はああしたいこうしたい。
とても近い将来、その機能はブラッシュアップされそうだ。
そのブラッシュアップされた姿こそが、
おそらくエンドユーザーが求めているであろう機能と合致する。
期待通りの機能。それは四半期待てば登場するかもしれない。
つい、声を荒げたい衝動に駆られた。
消費者はラットですか?
業界初という売り文句。
先んじることで蓄積されるデータ。
それらを欲するがために、完成型にほど遠い
状態の機能をエンドユーザーに買わせていいのか!?
もちろん、未完成の状態でもそこに
ユーザーニーズがあるなら話は別だろう。
しかし、今回の機能はその手の類ではない。
むしろユーザーが欲しているのは完成型なのだ。
たまりかねて「その機能をオプションとして
投入する予定はないのか」と尋ねた。
オプションならば、今期購入したユーザーも
いずれブラッシュアップの恩恵に与れる。
答えは煮え切らないものだった。
「現状ではまだわからない」と。
彼らは決して手を抜いているわけではない。
それどころかよりよいものを作りたい
という向上心に満ちている。
ただ、二言目には「コストが……」という言葉が
口をつき、結果としてユーザーの期待を裏切る。
エンドユーザーは、パソコン購入のために
20万円程度のお金をつぎ込む。
安くない。けっして安くない。
新機能をアピールする以上、
メーカーはエンドユーザーの期待に
応える義務がある、と僕は思う。
ましてその障壁が、技術的なことではなく、
コストレベルの話であるならば。