Photography

April 09, 2017

オールドレンズの森は深いままでいい

とあるレンズのリペアマンが、Facebookでヤシコールの謎を解析していた。Yashikor 5cmF2.8はクセノタール型のレンズとして有名だ。が、一部にテッサー型らしき個体があり、クセノタールなのかテッサーなのか、その謎に迫るというものだ。彼はいくつものヤシコールを解体し、一次情報から「Yashikor 5cmF2.8はすべてクセノタール型というわけではなく、テッサー型もある」と結論づけた。定説を覆す勇気がすばらしい。

実はぼくもYashikor 5cmF2.8は持っている。クセノタールという触れ込みで買ったものの、現物を見る限りテッサー型としか思えない。レンズに詳しい人に相談したところ、やはり「ヤシコールにはクセノタールとテッサーがある」という話だった。ただ、世の中には「ヤシコールといえばクセノタール」と信じて止まない人がたくさんいるわけで、そうした逸話はオールドレンズ的ロマンのひとつと理解した。

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α7II + Yashikor 5cmF2.8

似たようなことは、オールドレンズにハマリだした当初、アンジェニューで経験したことがある。P.Angenieux Paris 35mmF2.5 R1は、ゆるふわの代名詞のようなレンズだった。Exakta VX1000に付けて撮ったところ、とにかくピントが合わない。35ミリレンズなのである程度被写界深度が深いのはわかる。そうは言ってもどこにピンがきているのはまるでわからないのだ。カメラの先輩達に相談したところ、「アンジェニューはそういうものだから」という答えだった。アンジェニューはそもそもフワフワした写りで、ピント精度を追い求めて使うようなレンズではないと。ただ、このレンズをデジタルで使うようになり、状況が一変する。

当初、EOS 20Dという中級デジタル一眼レフでアンジェニューを試した。このカメラはファインダーが小さく、ライブビューもない。当然ながらピント合わせには苦労し、ゆるふわな写真ばかり撮っていた。が、その後、EOS 1D Mark IIIというライブビュー可能なカメラに買い換え、さらにミラーレス機が登場するに至り、デジタルでのファインダー環境が大幅に改善する。すると、例のアンジェニューでもジャスピンで撮れるようになった。目の前に現れた像は、これまで見たこともないカミソリで削いだようなシャープさだ。それ以来、このレンズをレビューするときはカミソリシャープという言葉を使うようになった。

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α7II + P.Angenieux Paris 35mmF2.5 R1

ただ、ここで注意したいのは、「アンジェニューをゆるふわと称するのはまちがい。カミソリシャープこそが真の姿だ」と言ってしまうと必ずしも正しくない点だ。つまり、こういうことだ。ライブビューの拡大表示というファインダー環境が使えるようになり、我々はようやくアンジェニューのシャープさに気付けた。アンジェニューは昔からシャープだったものの、それを引き出せるファインダー環境(要はカメラボディ)がなく、結果、ゆるふわなレンズと称されることが多かった。ゆるふわもカミソリシャープも、どちらもアンジェニューの姿というわけだ。

ぼくはこの手の話をオールドレンズ的ロマンと呼んでいる。オールドレンズにまつわる逸話は本当にたくさんある。特にOEMがらみの逸話の一人歩きっぷりはすごい。OEMの実情が表に出てくることは原則ありえないので、多くは憶測だったり、個体レベルの話に過ぎないのだが、もっともらしく語られると、「なるほど、そういうものか」と思ってしまう。以前、当時の関係者に取材してみたら、オールドレンズ界隈で言われていることとまったく別の答えが返ってきて驚いたことがある。また、当時のレンズ設計者と言えどもOEMなどの営業方面はタッチしていないため、逸話の裏取りは想像以上に険しいと感じた。オールドレンズの森はかくも深いものなのだ。

さて、ぼくはオールドレンズ研究家ではない。あくまでもオールドレンズの本を作るライター兼編集者だ。ぼくの目的は、オールドレンズの森を刈って真実に光を当てることではない。むしろオールドレンズの森の歩き方を意識している。オールドレンズの森に足を踏み入れ、深く、より深く分け入っていく。そこに高揚感があることを、オールドレンズファンならばよくご存知だろう。ゆえにオールドレンズ的ロマンなのだ。

オールドレンズの森は深くていい。深ければ深いほどいい。森の中で彷徨うことも含めて、オールドレンズの楽しさなのだと思う。

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March 29, 2017

Vitessa T プランジャーの攻略

フォクトレンダーのビテッサTというカメラをご存知だろうか。スプリングカメラのビテッサは有名だが、ビテッサTはビテッサのデザインを継承しつつ、レンズ交換式にしたカメラだ。レンズ交換式という機能性アップを果たしているにも関わらず、ガンダムに対するジム的な外観がそこはかとなくわびしいカメラである。

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そんなこんなのビテッサTだが、向かって右側に棒が突き出している。これはプランジャーと呼ばれ、押し下げるとワンアクションでシャッターチャージできる画期的機構だ(もちろん当時において)。ただこのプランジャー、突き出した状態ではどうにも座りがわるい。押し込んだままの状態にできないものかと色々調べてみたのだが、グーグル先生の答えは「できるけどやり方はわかならない」だった。ダメじゃん(笑)。

そこでFBでボヤいたところ、市川泰憲さん(日本カメラ博物館のエライ人)からコメントが付いた。曰く、ゆっくり押し込めばOKと。試してみると、ゆっくり押し込むだけで固定できた。おいおい、今までの苦労はナンだったんだ!? ただ、幾度か試していくと、百発百中とはいかなかった。ゆっくりやっても指を離した途端、飛び出してしまうこともある。機械である以上、100パーセントの再現性がほしい。できたりできなかったりではナットクしがたい。

通常の押し込みとゆっくりした押し込み、そのちがいを自分なりに観察しながら試した結果、再現性100パーセントの操作方法に至った。ぼく以外にビセッタTのプランジャーに悩んでいる人が何人いるかわからないが、備忘録としてここに明記しておく。

●Vitessa T プランジャーの固定方法
プランジャーを最後まで押し込まず、少し手前で指を離す。

プランジャーはスプリングの反発が強く、ゆっくり押し込むと最後まで押し込めずに指が離れる。そのため、ゆっくり押し込むと固定できたわけだ。また、ゆっくり押し込んでも、最後までしっかり押し込めば、指を離した途端に飛び出してしまう。

夕方からプランジャーの押し込みを訓練した結果、高速押し込みでも固定できるまでに上達した。名刺の肩書きに「Vitessa T プランジャープロ」を加えたい。

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March 28, 2017

アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト 授賞式に出席してきました!

3月25日、アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテストの授賞式が開催されました。フォトコンの審査は何度か経験がありますが、授賞式というリアルイベントはお初。今回ぼくは賞状を受賞者の方にお渡しする側だったのですが、こういうハレの日はいいですね。テンション上がります!

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●アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト 最終審査結果

授賞式会場は代官山北村写真機店で、さらにアルティザン・アンド・アーティストの代表、エンリコ社長も出席。とても本格的な授賞式でした。

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授賞式のあとはトークイベントです。コンテストの総評を述べ、その後オールドレンズネタに突入していきます。

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お客さんを見渡すと、見知った顔がいくつもあり、落ち着いてトークできました。今回のトークショーはホームでした(笑)。

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トーク後は参加者のみなさんとカメラ写真談義に花を咲かせたり、いっしょに写真を撮ったりと、楽しい時間を過ごしました。あと、読者の方と交流できたのもうれしかったですね。ライターという職業はどうも部屋にこもりがちなので、生の声を聞けるのはとても貴重な機会でした。

●追記
デジカメWatchに授賞式のレポートが掲載されました。合わせてご覧ください。
アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテストの授賞式が開催

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March 21, 2017

一色卓丸著「原宿ストリートポートレート」トークイベントのお知らせ

編集でお手伝いした一色卓丸さんの「原宿ストリートポートレート」、こちらの発売記念トークイベントが開催されます。作家から直接ストリートポートレートの秘訣を聞けるチャンスです。場所はライカプロフェッショナルストア、ゲストはハービー・山口さんです。

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●「原宿ストリートポートレート」発売記念トークイベント
開催日時:2017年4月2日(日)14:00〜15:30(受付開始13:30〜)
出演:一色卓丸氏、ハービー・山口氏
会場:ライカプロフェッショナルストア東京
※お申し込み方法など、詳細はCAMERAfanのページをご覧ください。

著者サイン会やライカのタッチ&トライもあるそうです。ご興味ある方、ぜひ!

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March 17, 2017

ファイナリスト発表です(アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト)

アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテストのファイナリストが発表になりました。最終候補作は15点。アルティザン&アーティストのオフィシャルサイトでご覧いただけます。

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●アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト
第2回フォトコンテスト審査結果発表

3月25日の授賞式にて、受賞作品を発表します。授賞式後は僭越ながら澤村のトークショーがあります。オールドレンズとかライカとかドレスアップとか、いろいろお話したいと思っています。ぜひお立ち寄りください。

●第2回フォトコンテスト授賞式&トークショー
日時:3月25日 18:00~
場所:代官山北村写真機店
※参加無料、予約不要

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March 07, 2017

ファッションで人は自由になる(原宿ストリートポートレート/レビュー)

なぜ彼は、原宿で外国人ばかりを撮るのだろう。それが初めて一色卓丸氏のポートフォリオを見たときの感想だった。

原宿を行き交う、個性的なファッションに身を包んだ外国人を、彼は一台のライカで切り取る。写真の中の彼女たちは、誇らしげなポーズをとるでもなく、無理に笑顔を作るでもなく、自宅の前で親戚に写真を撮られたような姿で立っている。この時この瞬間、彼女はまちがいなくここにいた。そんなリアリティーのあるポートレート。その撮影は2011年から始まり、そして今も週末になれば、一色卓丸氏はライカを提げて原宿を歩く。なぜ彼は、このようなストリートポートレートを撮り続けるのか。今回、「原宿ストリートポートレート」の編集を頼まれた時、真っ先にそのことを訊ねた。

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●一色卓丸「原宿ストリートポートレート」[玄光社][Amazon
出版社:玄光社
判型:B5変型判 224ページ
発売日:2017年3月7日

その答えのために丸ごと章を割くことにした。第2章「なぜ僕は、原宿でストリートポートレートを撮るのか」は、作家自身の言葉でストリートポートレートの理由がたっぷりと語られている。なぜ原宿なのか、なぜ外国人なのか、なぜライカなのか。ここで種明かしすることはできないが、一色卓丸氏のストリートポートレートに懸ける強い思いを感じてもらえるだろう。

本書の編集者としてひと言。ファッションは人を自由にする。自由を求める心がファッションを為す。どうか世界がいつまでも、ファッションの自由で充ち満ちていますように。

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March 03, 2017

「アルティザン・アンド・アーティスト 第2回フォトコンテスト」締め切り間近です!

「アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト」の応募締め切りが迫ってきました。締め切りは3月5日。残すところ3日間のみとなりました。担当さんに確認したところ、応募数が多すぎてデータ整理が追い付かないとうれしい悲鳴を上げていました。大丈夫、担当さんはやればできる子なので、駆け込み応募歓迎です。どんどんご応募ください。

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●アルティザン・アンド・アーティスト 第2回フォトコンテスト
締め切り:2017年3月5日
授賞式:2017年3月25日 代官山北村写真機店
※応募詳細は上記のリンク先にてご確認ください。

このコンテストは、風景、人物、オールドレンズと3部門に分かれています。ぜひ得意ジャンルでチャレンジしてみてください。使用機材は問いません。お気に入りのカメラとレンズでOKです。副賞が豪華で、なおかつ受賞作が代官山北村写真機店に展示されたりと、特典も盛りだくさんです。締め切りまであと3日、みなさんのご応募お待ちしております。

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February 27, 2017

一色卓丸さんの「原宿ストリートポートレート」をお手伝いしました!

ぼくは写真仲間と呼べる友達が少ない。元々ライターという職種はひとりで作業することが多く、カメラ写真業界で書くようになってからは、撮影も執筆も編集もすべてひとりでこなすようになり、ますます人付き合いが減ってしまった。フリーランスなんて所詮、プロのボッチだからな(笑)。そんなぼくにとって、写真家の一色卓丸さんは数少ない写真仲間だ。

彼と知り合ったのは、ぼくが講師を担当するオールドレンズパラダイスがキッカケだ。第1期からおそらく5年近くは受講生として参加してくれた。当初はオリンパスペンにオールドレンズを付けて撮っていたが、そのペンにライカレンズが付き、ボディがM8に代わり、あれよあれよという間にライカな人になってしまった。

一色卓丸さんの撮影スタイルは首尾一貫している。原宿で、外国人を、ストリートで撮る。当初からずっとこのスタンスだ。ストリートでテンポよく撮ることを思うと、レンジファインダーのライカに行き着いたのもうなずける。

彼の撮るストリートポートレートはリアリティーが秀逸だ。被写体となる外国人は、目を惹くファッションに身を包みつつも、作り込んだような不自然さがない。予定調和の欠片もない素の佇まい。彼女はまちがいなく、その時、その場にいた。その証明としてのポートレート。彼のポートレートは偽りなき瞬間が宿っていると思う。

その後、ぼくが編集担当するムックに何度か作品を寄稿してもらい、時を同じく、個展を開催したり、ポートレート講座の講師を務めたり、彼は写真家として活動の幅を広げていく。その集大成とも言えるのが、今回の写真集だ。

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●一色卓丸「原宿ストリートポートレート」[玄光社][Amazon
出版社:玄光社
判型:B5変型判 224ページ
発売日:2017年3月7日

昨年、玄光社から「一色さんのポートレート集を作りたい。ついては編集を担当してほしい」と打診があった。二つ返事で快諾したのは無論、我がことのように興奮した。昨今、有名写真家ですら自らの作品集を出すのは難しい。そうした時代、自らの売り込みではなく、出版社サイドからのオファーだ。写真家のサクセスストーリーを目の当たりにした瞬間だった。

掲載写真はすべてライカで撮っている。レンズのセレクトもけっこう燻銀だ(キャプションでチェック!)。ポートレートファンだけでなく、ライカな人にもお薦めしたい。ちなみに、帯文はハービー・山口さんだ。ファッション、ストリートポートレート、そしてライカ。3つのキーワードが織り成すTakumaruワールドをご覧あれ!

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A&A 第2回フォトコンテスト、締め切りまであと一週間です!

Leica M10を買いました。自分に言い訳するための「買うべき理由」はいくらでもでっち上げられますが、買うといいことありそうだから買った、とまあそんな感じです(笑)。M8のときもM240のときもそうでしたが、きっとM10も新しいフィールドに連れて行ってくれると信じています。

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Leica M10 + Summicron 35mmF2 RF

さて、大盛況だったCP+2017も終わり、一息つくまでもなく、例のアレがやってきます。そう、「アルティザン・アンド・アーティスト第2回フォトコンテスト」の締め切りです。ご応募いただけるのは3月5日までです。あと一週間、みなさんの自信作、ぜひご応募ください。

●アルティザン・アンド・アーティスト 第2回 フォトコンテスト

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Leica M10 + Nokton 50mmF1.5

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Leica M10 + Canon 50mmF1.8

M10で色々なレンズを取っ替え引っ替え楽しんでいます。おかげで仕事が進みません(笑)。

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February 11, 2017

「Mobbed Hong Kong」をウェブ公開しました!

日本カメラ2016年9月号に載せていただいた「Mobbed Hong Kong」を、自身のオフィシャルサイトに掲載しました。雑誌掲載カットからの抜粋と、未掲載カットをミックスして公開しています。香港の巨大アパートメントが好きな方、ぜひご覧ください。広角で撮ったカットが多いので、迫力のある様子を堪能していただけると思います。

●Mobbed Hong Kong - metalmickey.jp

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