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June 20, 2008

Leica M8 で赤外線写真

ライカジャパンがウェブ上で公開しているデータによると、Leica M8の赤外線カットフィルターは極薄だという。これは高画質化に貢献する一方、長波長赤外線に敏感に反応してしまうんだそうな。そう、例のマゼンタかぶりである。これは見方を変えると、CCDにたっぷりと赤外線が届いているということ。つまり、赤外線写真が撮れるのではないか!? というわけで、赤外線フィルターを買ってみた。

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【デジカメと赤外線写真の関係】
現在市販されているデジタルカメラは、その多くが赤外線カットフィルターを搭載している。赤外線が画質低下をまねくという理由から赤外線カットフィルターを搭載しているのだが、ぶっちゃけ盗撮防止という側面も無視できない。結論からいうと、現在のデジタルカメラでは、赤外線フィルターを付けても赤外線写真は撮れない。なぜなら、内蔵する赤外線カットフィルターが肝心カナメの赤外線を遮断してしまうからだ。

というわけで、Leica M8の出番だ。M8も赤外線カットフィルターを搭載しているが、黒がマゼンタかぶりするほどに極薄である。つまりこれは、CCDに赤外線が届いている証拠だ。そこで赤外線フィルターを装着して、赤外線以外の光線をシャットアウト。赤外線だけがCCDに届き、赤外線写真が撮れるようになる。赤外線写真といえば、真っ白な木々、真っ黒な空。非可視光線だけに満ちた幻想の空間。肉眼では見ることのできない世界を写し出してくれる。論より証拠、とりあえずは拙作をどうぞ。

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Leica M8 + GR Lens 21mmF3.5 with R72 filter

真っ黒な空とまではいかないが、木々の白さはなかなか異様で見応えがある。漆黒の水面も不気味さ満点でおもしろい。上の作例はすべてHOYA R72フィルターを使用。国内では入手できないため、eBayのBuy it nowで購入した。価格は送料込みで42ドル。円高のおかげで4000円強で手に入った。

【Mマウントレンズにも赤外線指標がほしい】
実際の撮影だが、まずシャッタースピードに悩まされる。カメラの露出計は原則的に可視光線を測定するものだ。赤外線撮影は赤外線フィルターで赤外線以外の光線をカットしてしまうわけだから、露出計の値は参考にならない。幸いデジタルカメラはすぐにプレビューできるので、ざっくりしたセッティングで撮って、プレビューを確認しながら微調整をくり返す。前掲の写真は晴天下で撮っているが、絞りF3.5~F5.6でシャッタースピードは1/20~1/50程度。かろうじて手持ち撮影の範囲内だ。ぼくは手持ち撮影が基本形なので、手ブレ防止策としてGR Lens 21mmF3.5や改造G Biogon T* 28mmF2.8など、広角レンズで撮るようにしている。

次に悩まされたのはピント合わせ。当初「なんだか後ピンになるなあ」と思っていたのだが、赤外線撮影は前ピンで撮るのがお約束らしい(知らなんだぁ)。赤外線は波長が長いため、可視光線下の合焦位置からズレるものなのだと。ものの本によると、屈折率のちがいがうんちゃかんちゃら……。詳しいことは、理系なお友達に訊いてみてください(汗)。

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というわけで、昔のレンズには赤外線指標というものが刻まれていたらしい。手持ちのオールドレンズを引っ張り出してみると、ありました、赤外線指標! 左上はMC FLEKTOGON 35mm/f2.4、その隣はMC Zenitar-M 16mm/f2.8、下段はPlanar T* 85mm/f1.4。どれも指標の右側に赤い線とかポッチとか、赤外線撮影用の指標が見える。かねてから「このマークはナンなんだろう」と疑問に思っていたのだが、赤外線撮影用だったんですねえ。嗚呼、知らないことが多すぎる。深いぞレンズって。

で、肝心のMマウントレンズはというと、ない、ないんですよ赤外線指標が。仕方ないので、ピントを合わせてからちょい前ピンに手動補正。たいてい広角レンズで撮っているので、パンフォーカス効果のおかげで大きくハズすことはない。ただ、ジャストで撮れることもないんだけど。

ちと愚痴っぽくなってしまったが、そうはいってもM8の赤外線撮影は圧倒的に快適だ。一眼レフと異なりファインダーの採光が独立しているから、赤外線フィルターを付けても明るいファインダーでピント合わせができる。これが一眼レフだとファインダーは真っ暗けだ。デジタルカメラ黎明期は一部の機種で赤外線カットフィルターが未搭載だったようだが、現状ではM8がほぼ唯一の赤外線撮影対応デジタルカメラとなる。なにしろ高いカメラだし、このくらいのお楽しみがあってもバチは当たらないか。

【赤外線写真のレタッチスタイルは?】
目下赤外線写真で思案しているのは、後処理のパターン作りだ。赤外線写真というとモノクロの印象が強いけど、撮って出しの状態はカラーである。このカラーデータを印象深くグレースケール化していくわけだが、これがけっこう難しい。

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左が撮って出し。右はLightroomでストレートにグレースケール化したものだ。撮影状況にもよるが、そのままグレースケール化すると少々物足りない。通常のカラーデータなら、グレースケールミキサーでごりごりとイジれる。ところが赤外線写真のカラーデータは、赤からマゼンタという近接した色で構成されているため、特定色だけ明度を調整してもコントラストがつけづらいのだ。

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左は全体の彩度を落とした例。右はその状態からマゼンタの彩度をゼロにして、ハイライト部分にアオをうっすら載せてみた。なんていうか、迷走してますね。

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Leica M8 + GR Lens 21mmF3.5 with R72 filter

最終的に落ち着いたのはこんな感じ。アカとオレンジの彩度をゼロにして、マゼンタだけかすかに残す。一方、コントラストやトーンカーブはイジらない。画作りが硬くなると、赤外線写真特有の幻想的な空気感が損なわれてしまうからだ。被写体によりけりだけど、どうも赤外線写真は通常のレタッチセオリーが通用しない。赤外線写真の傑作をたくさん見て、どんなスタイルがかっこよくて美しいのか、これからたっぷり勉強しないと。まだまだ落とし所が見えてきません。

●追記
Leica M8で撮影した赤外線写真ギャラリーを作りました。ぜひご覧ください。
Digital Infrared(metalmickey's web)

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Comments

はじめまして、こんにちわ。

M8はローパスフィルターが赤外線を割合通すと聞いた事が
あります。私も赤外線撮影をしていますが改造した物を
使用しています。レタッチはあまり深く考えずにやっています。
実際に撮影された作品興味深く拝見しました。

Posted by: 伸之助 | November 15, 2009 at 04:04 PM

伸之助さん、はじめまして。
M8の赤外写真、ご覧いただきありがとうございます。12月に赤外写真の個展を開きます。ご興味あれば遊びに来てください。よろしくお願いいたします。http://www.metalmickey.jp/exhibit/index.html

Posted by: metalmickey | November 15, 2009 at 07:57 PM

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