« GR DIGITAL カスタム再始動 | Main | GT-X900 お手軽フィルムスキャンの法則 »

March 09, 2007

Exakta VX1000 機械式ギミックの花園

一連のGR DIGITALカスタマイズでやってきたことは、端的にいってしまえばデジタルカメラのクラシックカメラ化だ。だったらいっそ、クラカメ買えばいいじゃん。そんなツッコミを入れられるまでもなく、前々からクラカメ購入をもくろんでいた。どのカメラを買うか。ファーストクラシックカメラはどれにするか。現代的デザインの彼岸にあるような、メカっぽさ全開、金属の塊、すみずみまで機械式の写真機。いろいろと悩んだ挙げ句、Ihagee Exakta VX1000を手に入れた。

_mg_6026

_mg_6030_1Exaktaというカメラは1950~1970年にかけて旧東ドイツで製造され、元祖一眼レフと称されることが多い。その独特の外観から甲冑カメラと呼ばれたりもするが、それはロゴを浮き彫りにしたり刻印したモデルのこと。ぼくが手に入れたExakta VX1000は最後期の1967年頃に作られたモデルで、デザイン自体は現代的、というかモダン(笑)だ。少なくとも博物館に陳列されるほどのクラシックカメラではない。まあ、世界強面カメラ選手権で上位入賞しそうな面構えだが、見た目もさることながら、ユニークな機構が盛りだくさんだ。特にデジタルからカメラをはじめたぼくにとって、目からウロコなギミックが目白押し。今回はそんなExaktaのギミックを紹介してみたい。

【赤く知らせる未巻き上げサイン】
_mg_6082_4 _mg_6085_5 _mg_6087_3 
まず目を引くのがウエストレベルファインダーだ。下を向いて撮るという新鮮さに加え、ファインダーが広いので眼鏡使用のぼくにはとても使いやすい。ミラーに写った像をそのまま見るため左右反転してしまうのが難点だが、これは慣れが解消する部分。ただ、この左右反転というのはちょっとクセモノで、水平をとる際にどっちに傾ければいいのか迷ってしまう。そんなときは両手でしっかりホールドすると、案外すんなりと水平が出せるから不思議なものだ。どうしても使いづらいということであれば、このファインダーは交換式なのでアイレベルファインダーと取り替えればいい。

数枚撮影して妙な現象に気づく。ファインダーをのぞくと、左端に半透明の赤いかけらが見え隠れするだ。このカメラはずいぶんと安く手に入れたので、故障品をつかまされたか……と肩を落としたが、実はそうではなかった。この赤い奴、フィルムを巻き上げると消える。シャッターを切るとあらわれる。そう、フィルム巻き上げのサインなのだ。なんてユーザビリティーに富んだカメラなんだっ。

【レンズ横のポッチはナンですか?】
_mg_6098_1次いでExaktaの特徴といえば、やはりレンズ横のポッチだろう。結論からいえば、こいつはレリーズボタン、シャッターだ。ボディ前面にレリーズボタンがあり、これをレンズのボタンが押し込む仕組みになっている。Exaktaは自動絞りに対応していて、シャッター半押しで絞りがキュッと絞り込まれる。これがちょっと新鮮な世界だった。いまどきの一眼レフは自動絞りなんてアタリマエだが、マウントアダプタ経由でクラシックレンズを使うと実絞りになってしまう。暗いファインダーに耐えてピントを合わせるか、シャッターを切る直前に絞り込まなくてはならない。でもExaktaなら、クラシックレンズを自動絞りで使える。まったくもって倒錯的な話だが、デジタル世代には新鮮な世界だ。

_mg_6104細かいところではレリーズロックがおもしろい。ボディのシャッターをロックするシンプルな機構だが、携行時の安心感につながるのはたしかだ。写真はレンズをはずした状態だが、もちろんレンズ装着したままでもロックできる。賢明な人はこの写真をみて、「おいおい、このカメラったらシャッター左側じゃん」と気づいたことだろう。そう、Exaktaはよく左利き用カメラなんて揶揄されることがある。たしかに左手でシャッターを切るという行為は、長いカメラ史において異端以外のなにものでもない。しかし、ウエストレベルファインダーと組み合わせると思いのほかスンナリ受け入れることができた。胸の前で何か大切なものを抱えるように、両側からしっかりとカメラを包み込む。そんなホールディングスタイルだと、左手シャッターもそれほど不自然ではない。後述するが、シャッタースピード、巻き上げ、レリーズと、Exaktaはすべて左手だけで操作できる。右手はしっかりとカメラを支えていればいい。これはこれで理にかなった世界観だ。

【まるでギロチン-フィルムカッター】
_mg_6124 _mg_6122
裏ブタを開けると奇妙なものが目に飛び込んでくる。フィルム装填のハウジングにカッターが付いているのだ。これはフィルムカッターと呼ばれるもので、初期のExaktaから搭載されているもの。まだフィルムが高価だった当時、途中で別のフィルムに交換する際、これでフィルムをカットしたらしい。カットするときは前もってマガジン式スプールに交換しておく必要がある。コレクター魂がマガジン式スプールも集めよと命じるが、理性はそこまでしなくてもいいという。内なる開発部長は「スプールの前にアイレベルファインダーだね」なんてノンキなこというが、経理部長が大きく手を挙げて×をつくっている。社長のツルの一声「エキザクタといったらアンジェニューだろっ」は幻聴か……。

_mg_6093_1 _mg_6109_1 _mg_6108
ギミックはまだまだつづく。右ダイヤルはスローシャッターとセルフタイマーのダイヤルで、シャッタースピードダイヤルでBおよびTを選ぶと動作する。ゼンマイ式なので精度は推して知るべしといった状態だが、ゼンマイで時間制御という発想に不覚にも感心してしまった。機械式かくあるべし、である。その横にある小窓はフィルム巻き上げを確認するためのもの。フィルムを巻き上げると、フィルムマガジンの軸が内部のマークを動かして巻き上げ動作を確認できる。残念ながらぼくが手にした個体はうまく動いてくれないのだが……。

左側は巻き上げレバー、シャッタースピードダイヤル、巻き戻し用ボタンが並ぶ。フィルムカウンターはカウントダウン方式で、シャッターを切るごとにひとつずつ数字が減っていく。巻き上げたタイミングではなく、レリーズタイミングにカウントダウンするのが特長的だ。底面はいかにも頑丈そうな三本足が付いている。まるで高級オーディオのインシュレータのようだ。

【40年前の機械がとらえる光】
_mg_6139Exakta VX1000が作られたのはいまから40年ほど前のこと。そんなに古い機械でちゃんと写るのか? いやこれが、けっこういい感じに写る。付属していたレンズはCarl Zeiss Jena Tessar 50mm/f2.8Flektogonほどではないにせよ、とても評判のよいレンズだ。今回手に入れた個体はヘリコイドが軽く、チリ、ホコリもそれなりに混入していた。コンディションはよくないが、それでも気持ちよく写る。試写したものを載せておくのでご参考まで。なお、フィルムはFUJICOLOR SUPER400FTを使用し、スキャンしたものをSILKYPIXでレタッチしている。

Pho09_3 Pho04_6

Pho21_2 Pho01_7

色味はかなりいじっているが、レタッチするにあたっておもしろいことがあった。デジタル画像はかなりゴリゴリとイジり倒すのに、フィルムスキャンした画像はやさしめに仕上げようとする自分がいた。モノトーンライクなカラー写真という基本姿勢こそ変わらないが、主にコントラスト調整で普段とちがった心の動きがある。コントラストを上げるのではなく、下げる。シャープネスはかけない。解像感やメリハリよりも、空気感重視といったところか。まだ試写段階なので何ともいえないが、Exaktaの写真と向かい合うとき、普段とちがう気持ちになっているのはたしかだ。

【仕組みを肌で感じる機械仕掛け】
Pho07_5 Pho23_1
フィルム一眼レフで撮ったのははじめての経験だ。しかもよりによって、Exaktaというクセのあるカメラ……。すぐにちゃんと撮れたわけじゃない。コマが重なってしまったり、あやまって巻き戻しボタンを押してフィルムが感光してしまったり、巻き上げに失敗して1本オシャカにしたことも白状しておこう。

でも最近は、たとえば巻き上げ失敗は指先が感じる。そんなときはカラシャッターを切ってから、直前の構図でもう一枚撮っておく。左右逆転したファインダーも頭を切り換え、ファインダーの中が現実なのだと考えるようになった。ゼンマイ式のスローシャッターは正直アテにならないが、ネガフィルムなら何かは写っているはず。そんな風に割り切って撮る自分がいる。こうした心の動きを整理してみると、仕組みを知っている安心感が割り切りにつながっているようだ。デジタルカメラだとこうはいかない。動作不良は即電子的故障であり、修理しないと使えない。気持ちがささくれ立つ。不満と不安が募る。しかし機械式カメラの場合、多少の動作不良は個体のクセと解釈して運用で乗り切れる。わかりやすくいえば、「こいつを使いこなせるのはオレだけ」という自負心が、撮る楽しみを盛り上げてくれる。

デジタル機器の使いこなしは取扱説明書に記載された操作方法だ。一定手順を踏むことで、誰もが同じ結果を得ることができる。それは平等というデジタルの特権かもしれない。その点機械式カメラは不平等だ。個体差の大きいクラシックカメラともなれば、クセをつかまずに良好な結果は得られない。そんな不平等で偏屈な世界だが、ひとつだけステキな恩恵がある。

_mg_6056_4 _mg_6138_3 _mg_6142_3

カメラを愛でる。そんな気持ちになれるのは、機械式ならではの特権だ。

●Exakta VX1000で撮った作例はこちら

|

« GR DIGITAL カスタム再始動 | Main | GT-X900 お手軽フィルムスキャンの法則 »

Comments

プラハに住んでおります。
折角なので、これまで手にしたことのなかったクラシックなカメラ、レンズを入手してみようと思い探しておりました。記事を参考にさせていただき、Exakta vx1000を本日たまたま見つけ、1900 czK(=7,320jpY)で購入いたしました。
付属品はなにもなし。これから順に、レンズキャップやケースなど買い増して行こうと思っております。

Posted by: Rak na Bangkok | July 10, 2012 at 04:39 AM

プラハといえば、田中長徳さんがフィールドにしている街ですね。すてきな場所にお住まいでうらやましいです。Exakta VX1000は楽しいカメラですよ。このブログ記事を書いたあと、アンジェニュー35mmF2.5を手に入れ、よく撮り歩きました。

Posted by: metalmickey | July 10, 2012 at 08:38 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45820/14191414

Listed below are links to weblogs that reference Exakta VX1000 機械式ギミックの花園:

» 晴天下のExa [G3Blog]
バリ行きの直前に、Exaの試し撮りをしたフィルムの現像が上がってきました。駄目嫌ーのゴミプランなどと揶揄されるメイヤー・ドミプラン50mmF2.8がどれほどダメな描写をしてくれるのか、実は期待していたのですが…。 Exa... [Read More]

Tracked on March 21, 2007 at 04:16 PM

« GR DIGITAL カスタム再始動 | Main | GT-X900 お手軽フィルムスキャンの法則 »